アメリカから「中流階級」が消えている。かつては一家のお父さんたちが工場や 事務所で真面目にこつこつ働けば、その収入で妻と子供たちを養えるだけの収入が 得られた。郊外の住宅地に新築のマイホームも持てたし、数年ごとに新車を買い換える こともできた。休日には家族揃ってレジャーを楽しむ余裕もあった。子供たちは大学に 通うことができたし、病気になれば会社の保険で医療費がまかなえ、定年退職後は 手厚い年金制度で現役時代と変わらない暮らしが維持できた。それは特別なことではない。 社会の大多数を占める一般庶民は、真面目に働き続けさえすれば誰でもこうした暮らしを 手に入れることができたのだ。 だがこうした暮らしは、今や夢のまた夢。企業は国内労働者の人件費が高いことを 嫌って、工場を国外に移転させていく。国内に留まる企業は労働者たちの賃金を、 海外の発展途上国並みに低くする。これではいくら真面目に働いても、自分ひとりが 食べていくのが精一杯。街には失業者が溢れ、保険や年金の制度は崩壊して生活苦が 人々の肩にのしかかる。しかしその一方で、大企業のトップたちは庶民が一生かかっても 手にすることができないような報酬を、たった1年で稼ぎ出す。アメリカからは「中流」 が消えて、ごく一握りの「富裕層」と、それ以外の「貧困層」で構成されるいびつな 国になってしまった。 マイケル・ムーアの新作ドキュメンタリーは、そんなアメリカ社会の諸悪の根源を 「資本主義」だと指摘する。市場に資金を投下することで投資分以上の利潤を生み出す 資本主義は、世の中のありとあらゆるものを市場に流通させて金に換えてきた。目的は 利潤を生むことであって、目先の金のためなら法の網の目をくぐって何でも行って しまう。「法律違反でないなら金儲けのために何をしてもいい」という自由こそが、 資本主義を支えている。法律が経済活動を抑制しているなら、政治家に圧力をかけて 法律自体を変えさせてしまえばいい。国内で法的規制が厳しいのなら、規制のゆるい 海外に活動拠点を移せばいい。かくして大企業は国際化し、製造業者は労働法規が甘く 人件費の安い国々へ、排出物規制のゆるい海外へと工場を移転させる。金融業者は 人間の身の回りにあるありとあらゆるものを金融商品化し、債券化し、組み合わせて、 世界中に新しい金融商品として売りさばいた。 ソース:映画ジャッジ!
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