乾燥や高温、強い放射線などの極限環境に耐えられる微小な動物 「クマムシ」の全遺伝情報(ゲノム)を、東京大と慶応大、国立遺伝学研究所、 情報学研究所の研究チームが世界で初めて解読した。 乾燥して生命活動が停止した「乾眠」状態が数年以上続いても、 水分さえあれば復活するメカニズムの解明が期待される。 研究成果は、横浜市で開催中の日本分子生物学会で10日発表された。 国枝武和東大助教によると、乾燥耐性を担う遺伝子を突き止め、その働きを化合物で代替すれば、 細胞を薬物処理して乾燥保存できる可能性がある。 身体の多様な細胞に変わるヒトの万能細胞「人工多能性幹(iPS)細胞」などを再生医療に応用する際、 長期凍結保存するコストがネックとなるが、乾燥保存技術を開発できれば、実用化が進むという。 解読対象は、堀川大樹米航空宇宙局(NASA)研究員が、 札幌市内の路上の乾燥したコケから採取した「ヨコヅナクマムシ」(体長0.3ミリ)。 クマムシはこれまで飼育が難しかったが、ヨコヅナクマムシは、寒天培地の上でクロレラを餌として与え、 交尾なしの単為(たんい)生殖で産卵させ、増やすことができた。 約2万5000匹からDNAを抽出して分析した結果、ゲノムのサイズは約6000万塩基対、 遺伝子は約1万5000個と推定。このうち約1万2000個が、ほかの動物にはない固有の遺伝子だった。 時事ドットコム ヨコヅナクマムシ
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